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辻直希 (Naoki Tsuji)

所属

京都大学大学院 理学研究科

物理学第二教室 宇宙線研究室

助教

研究テーマ

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Moon Moisture Targeting Observatory (MoMoTarO)

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近年の宇宙情勢として、国主導の大型プロジェクトだけでなく、大学や民間企業が主導する小型衛星も活躍してきています。ここ5年で小型衛星の打ち上げ数が約10倍も増加しており、地球 (シス) 圏での宇宙開発が盛り上がりを見せています。一方で月・火星 (ルナ) 圏でもNASA アルテミス計画やJAXA SLIMを始めとして、人類の深宇宙探査が加速しています。こうした潮流を活かし、地球と月を含む広大な空間を舞台とした科学 - シスルナ (CIslunar) 科学として、地球周辺では難しかった新しい物理実験に挑戦します。

そこで我々は、惑星科学・天文学・素粒子物理学・土木工学など様々なメンバーを集めて多分野連携プロジェクト Moon Moisture Targeting Observatory (MoMoTarO) を立ち上げました。MoMoTarO は超小型衛星 CubeSat サイズ (10 cm x 10 cm x 10 cm) の、中性子とガンマ線を観測する放射線検出器です。これをシスルナ圏で運用し、以下3つの目標実現を目指します。

1. 月の水資源探査

月の科学・開発で重要な水は、様々な手法で探査が進められています。その中でも我々は中性子を使った水探査に注目しています。銀河宇宙線が月の表面に衝突して発生する中性子は、水があるとエネルギーを失い、低エネルギーの熱中性子として漏出します。この熱中性子を観測することで、非接触・非破壊で月面下の水探査を目指します。

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2. 中性子寿命測定

中性子は単体で存在すると、約15分で陽子などに崩壊します。この寿命がまだ定まっておらず、主要な2種の地上実験で原因不明の数秒の差が見られています。この中性子寿命パズルに挑む新しい手法として、月周回衛星を使った寿命測定に挑戦します。月面から漏出する中性子を月周回衛星で観測し、高度ごとのプロファイルから寿命を算出します。

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3. ガンマ線バースト観測

宇宙最大級の爆発現象であるガンマ線バーストを月で観測します。月と地球の距離差 39万 km (1.2 光秒) を利用して、これからの到来時間差による三角測量で決定されるガンマ線バーストの到来方向の精度向上に貢献します。

ISS宇宙実証

月進出の前哨戦として、国際宇宙ステーション (ISS) の船外実験スペースにMoMoTarOを搭載して宇宙実証を行います。2026年に打ち上げて暴露部で約6ヵ月間運用することで、MoMoTarOの検出器が正常に動作するか、どのような性能を発揮できるかを確かめます。さらに活動極大期にあたる太陽フレアからの中性子を観測したり、地球アルベド中性子の観測などサイエンス創出も狙っています。

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